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建築写真の上手な撮り方     2005/10/15

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      <<< 目次 >>>
はじめに
写真の上手な撮り方の基本
 ■ピンぼけ・手ブレ・露光過不足 失敗はカメラのせいだけじゃない
 ■ブレないようにカメラを固定する
 ■絞り・シャッタースピード・感度の関係を知る
 ■正しくピントを合わせる
 ■適正な露光量をあたえる
建築写真の上手な撮り方
 ■建築写真撮影のポイント
  ●建物の見え方は視点で決まる
  ●見えない物は写らない 見えている物が写せるとは限らない
  ●光による見え方の違いを意識して撮る
  ●建物の水平・垂直を意識して撮る
  ●建物の意味・特性を考えて撮る
 ■建築写真撮影のための機材の選択
  ●カメラを選ぶ
  ●レンズを選ぶ
  ●三脚+水準器を使う
  ●フィルムを選ぶ
  ●現像所を選ぶ プロラボを使う
  ●デジタルフォトの加工と出力
 ■建築写真撮影のテクニック
  ●“アオリ”について
  ●建物の水平・垂直を出す
  ●中心を意識して視点を合わせる
  ●その場の光で撮影する 光の特性に注意す
  ●露光量の決定
  ●ピントと被写界深度
  ●構図の決定 フレーミング
建築模型写真の上手な撮り方
 ■建築模型写真撮影のポイント
 ■建築模型写真撮影の機材の準備とテクニック
  ●撮影場所
  ●照明器具
  ●撮影機材
  ●撮影台
  ●背景
  ●デジタルカメラのホワイトバランスの設定
  ●フィルム選び
  ●露光量の決定
  ●撮影
  ●まとめ
おしまいに
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はじめに

 このテキストは、建築を学ぶ学生や建築設計家、建築に関わる仕事をしている方々を対
象として、「建築の写真を上手く撮るにはどうしたら良いか」ということに関して解説して
います。写真の基本技術やカメラの機能に関する解説書は、多数出版されていますので、
ここでは、「建築を撮る」ということに集中して解説してみたいと思います。

 近年、デジタルカメラやカメラ機能付携帯電話の普及により、日常的に写真を撮って気
軽に楽しむライフスタイルが広がっています。気軽にたくさん写真を撮ることで、撮影の
経験も増え、センスも磨かれ、Webなどの写真の使い道も広がっています。いろいろな面
でデジタル化のメリットが感じられる時代になってきました。

 2004年頃からデジタル一眼レフカメラの低価格化が進むと共に、デジタルに適応した新
規格のレンズが開発され、フィルム一眼レフカメラと同等以上の機能を持つ機種が手軽に
使えるようになってきました。新技術・新機種の開発スピードも予想以上に速く、今やも
うデジタルカメラがフィルムカメラに劣っている点はあまり無いといえるでしょう。既に
数年前の時点でフィルムカメラとデジタルカメラの売り上げは逆転していますし、今後の
新機種開発はほとんどがデジタルになると思われます。

 同時に、オートフォーカスや露出補正機能、手振れ補正機能などの進化により、カメラ
のフルオート化がいっそう進み、カメラの操作方法をほとんど意識せずにきれいな写真が
撮れるようになっています。それは言い換えれば、日常的に写真を撮影していて、いつも
ある程度上手く撮れる人でさえも、カメラがどんな機能を持っていて、今カメラが何をし
ているかを知らずにいることが多いということでもあります。とりあえず写真が上手く撮
れていれば、カメラの機能をこと細かに知る必要は無いのですから。

 カメラの機種によって多少異なりますが、一般的に最近のカメラには「フルオート」モ
ードの他に「ポートレート」「風景」「スポーツ」「接写」といった、状況によって設定
を切り替える機能が付いています。モードを選ぶことで、それぞれの目的に適した設定に
なりますが、どう違いがあるのかを知らずに使っている人も多いのではないでしょうか。
 建築を撮る時に必要な設定は、カメラの設計時に想定されていません。事実「建築」モ
ードが搭載されたカメラは存在しないので、カメラまかせでは「建築」が上手く撮れない
場合が出てきます。写真の基本を知り、特に建築を撮る場合に必要な注意点を知ることが
必要になってきます。


写真の上手な撮り方の基本

写真が上手く撮れなかった。失敗してしまった。原因はいろいろ考えられますが、大切
なのは問題点を知ること。写真の基礎的な知識が無いと、失敗してしまう原因がわからず
に同じミスを繰り返すことになります。
 デジタルカメラでもフィルムカメラでも、コンパクトカメラでも一眼レフカメラでも、
カメラの基本構造は変わりません。カメラまかせのフルオートで撮るにしても、カメラが
何をしているのかを知ってコントロールすれば、失敗が少なくなります。


■ピンぼけ・手ブレ・露光過不足 失敗はカメラのせいだけじゃない
 失敗してしまった写真のほとんどは、ピンぼけ・手ブレ・露光過不足になっています。
今販売されているカメラは、オートフォーカス・オート露光が当たり前で、さらに近年は
手ぶれ補正機能付きの機種が次々登場し、人気も高くどんどん普及してきています。
 フルオートのカメラまかせで撮っているときは、カメラは今何をやっているか意識せず
に撮影できます。しかし自分でカメラをコントロールできなければ、なかなか思うような
写真を撮るのは難しくなります。
 晴れた日の屋外での撮影ならフルオートでもまず失敗は無いですが、逆光・夜景・室内・
接写などの、フルオートで撮影するには難しい状況では、ほとんどのカメラは手ブレ警告
やエラーメッセージを表示してきます。こういうカメラが苦手とする状況では、露光補正
をしたり、三脚を使ったり、設定を変更したり、マニュアルで撮影する必要がでてきます。
 また現代のカメラは、機種ごとに操作方法が異なるので、操作マニュアルは必ず読みま
しょう。できればカメラといっしょに持ち歩きたいところです。たとえマニュアルを無く
しても、メーカーから再度入手も可能です。
 カメラを自在に操作できるようになったら、あとはフレーミング(構図の決め方)ライ
ティング(光の選び方)のセンスとか、テーマとか問題意識とかの領域になってきますが、
ここでは触れないでおくほうが良いでしょう。


■ブレないようにカメラを固定する
 被写体が動いている場合は別として、手ぶれは三脚でカメラを固定すれば無くなります。
手ぶれ補正機能の搭載機種はまだ少ないですが、室内などの撮影にはかなり有効です。
手持ちで撮れば必ずブレている
 ・三脚を使う→ ブレ幅は最小
 ・速いシャッタースピードで撮る→ブレは目立たなくなる
 ・高感度設定or高感度フィルムを使う→同じ明るさで速いシャッタースピードが使える


■絞り・シャッタースピード・感度の関係を知る
 写真の基本は、光と映像の定着方法です。光の量をコントロールするには、@レンズの
絞りAシャッターのスピードB受光素子orフィルムの感度 この3項目を操作します。
・絞り→ レンズを通る光の通路の口径をコントロールする。
 単位 f値=レンズの焦点距離/絞りの口径
 ←光量大                         光量小→
 f1.4 f2.0 f2.8 f4.0 f5.6 f8.0 f11 f16 f22 f32 f45 f64
 -------------------------------------------------
・シャッタースピード→ 受光素子orフィルムに光を当てる時間をコントロールする。
 単位 秒
 ←光量小                                          光量大→
 1/1000 1/500 1/250 1/125 1/60 1/30 1/15 1/8 1/4 1/2 1 2 4 8 16
 -------------------------------------------------------------------
・感度→ デジカメの受光素子orフィルムの感光剤が光に反応する度合いを数値化。
 単位 ISO
 ←感度小                                   感度大→
 ISO 25  ISO 50  ISO 100  ISO 200  ISO 400  ISO 800  ISO 1600
 --------------------------------------------------------------
 

■正しくピントを合わせる
 オートフォーカスが当たり前になって、マニュアルでピント操作ができないカメラも多
くなっています。カメラまかせのオートフォーカスでは、自分の意図したところにピント
が合わないこともあるので注意が必要です。
 またピントの合わせ方で出来上がった写真に違いがあることも知りましょう。
絞りと被写界深度の関係に注意
 ・絞りを開く→ 被写界深度は浅く=ピントの合う範囲(奥行)は狭くなる
 ・絞りを絞る→ 被写界深度は深く=ピントの合う範囲(奥行)は広くなる
 ・ピントが合う場所は一点のみ。被写界深度内はピントが合っているように見えるだけ
ピントを合わせる対象は?
 ・見せたい対象物にピントを合わせる→ 前後をぼかす
 ・手前から1/3 位のところにピントを合わせて絞りこむ→ パンフォーカス
 ・オートフォーカスカメラは、何も無い空間にはピントを合わせられない


■適正な露光量をあたえる

 露光過不足はよくある失敗です。最近のカメラは逆光補正の必要が無いほど正確な露光
をしてくれますが、デジタルカメラやポジフィルムは露光量の許容範囲が狭いので、撮影
状況によっては、露光補正や段階露光などが必要です。
 また暗い室内や夜景などでは、カメラのフルオートではフラッシュを使う設定になりが
ちですが、室内の雰囲気を重視する場合や奥行きのある室内などの撮影では、フラッシュ
非発光の設定にする必要があります。
カメラに内蔵されている露出計の限界
 ・カメラの露出計は黒いものも白いものも同じ明るさにしようと判断しやすい評価測光
 ・中央重点測光などの設定・機種・メーカーごとに特性がある反射式露出計の限界
  → 入射式露出計の使用
 ・画面内に光源があるとき=逆光のときは→ +1〜2の露出補正が必要になる室内空
  間の撮影は、ほとんどの場合が逆光状態になる


受光素子orフィルムの種類による適正露出の違い
 ・デジタルカメラの受光素子は露光量の許容範囲が狭い
  → 適正露出が必要撮ったその場で確認するのが基本
  → 1/2段刻みなどの段階露光と合成も考えた露光
 ・ネガカラーフィルムは+1〜2段のオーバー露光でも問題なし−1段以上のアンダー
  露光は問題あり
  → +1段オーバーを基準にしてOK
 ・ポジカラーフィルムは露光量の許容範囲が狭い
  → 適正露出が必要 1/2段刻みなどの段階露光が基本
  → 被写体の色や明るさによって補正量を変える


フラッシュ(ストロボ)の光は補助光程度に考える
 ・フラッシュ非発光設定で撮影するのが基本
 ・フラッシュの光が有効なのは3〜7m位→ 広い空間や遠くの被写体には無効果
 ・室内光+フラッシュの補助光=スローシンクロを使ってみよう
 ・フラッシュの調光補正=フラッシュの光量のみ −1〜−2段補正して撮ってみよう



建築写真の上手な撮り方

 建築にかかわる写真撮影には、建築見学・敷地調査・模型写真・工事工程記録・竣工
記録等さまざまな場面があります。ここでは建物完成時の建築竣工写真撮影を中心として、
建築写真を簡単に上手に撮るための注意点をあげていきます。


■建築写真撮影のポイント

 風景、人物、建築…写真の撮り方の基本は共通ですが、建物を撮る時は注意しなければ
ならないいくつかのポイントがあります。基本的なことを簡単にまとめてみました。

●建物の見え方は視点で決まる
 同じ建物を、遠くから望遠レンズで撮った写真と、近づいて広角レンズで撮った写真
を比べると、建物の形、プロポーションが違っていることが分かります。
 同じ視点から望遠レンズと広角レンズで同時に撮影すれば、画像の大きさが違うだけ
で画像の形は同じになります。つまり広角レンズで撮った写真の中央の一部分を切り取る
(トリミングする)と、望遠レンズで撮ったものと同等の写真になるということです。
 寄棟屋根の建物を撮影する場合で、建物と視点との距離が取れない(引きが無い)ため、
近くから広角レンズで撮ると、屋根面が写っていなくて寄棟屋根に見えない写真になって
しまうことがあります。近づくと屋根面は見えなくなる、しかし距離は取れない。
こういう場合は、視点を高くするしか方法がありません。距離を取って遠くから見るこ
とができれば、屋根の形がきれいに見えてくるはずなのですが…。
 つまり、建物の見え方は、見る位置=視点で決まります。撮影のテクニックによって
変わる要素はごくわずかです。建物の形が良く見える場所を見つけることが先決です。
 ★建物の見え方は、見る位置=視点で決まる。良い視点を見つけるのが一番重要。
 ★建物に近づいたり遠ざかったり、周囲を一周してみて、ベストな視点を見つける。

●見えない物は写らない 見えている物が写せるとは限らない
人間の眼は、カメラのレンズやフィルムとは比較にならないほど高性能で、融通が利
きます。かなりの超広角レンズですし、対象物にズームアップして超望遠レンズとして
も機能します。明るい所から暗い所まで、かなりの明暗比にも対応できます。
 また、映像の歪みや問題点を、無意識に(あるいは都合良く)修正して捉えています
から、撮影した写真と、意識した映像には、かなりのギャップが生じてきます。
つまり、眼で見えているものが写るとは限らないわけで、写真撮影の基本テクニック
によって、そのギャップをできるだけ少なくするか、あるいは、眼で見たものとは違う
画像を見せるかを選択し、コントロールする必要があります。
 ★人間の眼は、超広角〜超望遠の高性能レンズ。見えている物が写せるとは限らない。
 ★撮影の基本テクニックで、意図した通りに写真の仕上がりをコントロールする。

●光による見え方の違いを意識して撮る
 同じ建物でも、午前と午後とでは当然光の当り方が違います。方位を調べておけば、
どの方向から何時頃撮影したら、どんな見え方になるかが予想できます。
 光が当たっている部分の表情も、光の角度、雲による拡散の度合い、壁の材質、色彩、
様々な条件によって変化してきます。影の部分の割合も、建物の表情の重要な要素です。
 一般に、建物の外観写真は、晴天時に撮影するのが基本ですが、軒の深い建物の外観、
日の当たらない北面、日差しが強く差し込む室内、日本庭園などは、薄曇りの拡散した
光で撮影した方が、良い写真になる場合もあります。
 また、外部からガラス越しに室内を見通したり、室内から外部へと連続した空間を撮
影するには、外部と内部の明暗比が圧縮された、曇天時や夕暮れ時が適しています。
 ★晴れた日が撮影に適しているとは限らない。曇りや夕暮れにしか撮れない写真もある。
 ★光による建物の表情の変化を意識する。事前に方位を調べておくのがベスト。
 ★光による表情の変化
   晴天時の光 … 強コントラスト 方向性のある光 順光と逆光 光と影 材質感
   色彩曇天時の光 … 低コントラスト 拡散した光外部と内部空間の連続性
   夕景・夜景 … 透明感 照明と色彩外部と内部空間の連続性

●建物の水平・垂直を意識して撮る
 建築雑誌などに掲載されている写真は、建築写真を専門とする写真家によるものが中
心ですが、ほとんどの写真が、水平・垂直を意識して撮影されています。
 実際に、建物は水平・垂直を意識して建てられていますから、建物の高さ、プロポー
ション、空間の開放感、連続性、様々な要素を、正確に写真で伝えようとすると、水平・
垂直を正しく見せる必要があるからです。
 たとえば、連続した垂直の柱のうち一ヵ所だけ斜めに傾けてデザインされた建物を撮
るとき、水平・垂直を正確に写した写真でなければ、そのデザインの意図は伝わりませ
んし、場合によっては、写真にはすべての柱が斜めになって写ってしまった…という事
もあるわけです。
 また、建物のある壁面に対して水平・垂直を出して撮影すると、交差する別の壁面に
対しては水平を表現できないということもあります。立体の建築物を、平面の写真で表
現するわけですから、制約もあるわけです。
 建築の設計の専門家が、建築写真を撮るときは、その建物の透視図を描くことをイメ
ージしながら、カメラを構えてみると良いかもしれません。
 カメラをかまえる時、誰でも無意識のうちに、水平になるように持つのが普通です。
プロのカメラマンでも、カメラを手持ちで撮影するなら基本は同じですが、建築写真を
撮影するときは、ほとんどの場合、三脚と水準器を使います。より正確に、水平・垂直
を出すためです。また撮影機材には、“アオリ”の使えるカメラ(ビューカメラ等)か
レンズ(シフトレンズ)を使用します。水平・垂直を出すだけでなく、建物のプロポー
ションを整えたり、稜線の傾きを変えたりと、様々なテクニックが使えるからです。
 特別な機材を使わずに水平・垂直を出すには、“対象となる面と、フィルム面を平行
にする=対象となる面に対して、レンズの軸を垂直にする”ようにカメラを構えれば良
く、手持ちでもある程度、水平・垂直を出すことができます。
 ただし、高さのある建物等の撮影時に、このテクニックを使うには、16mm〜20mm
クラス(35oフィルムカメラ換算)の広角レンズが必要になるかもしれません。
 ★透視図を描くことをイメージしながら、建物の水平・垂直を意識して撮る。
 ★対象となる壁面に対して、フィルム面が平行になるようにカメラを構える。

●建物の意味・特性を考えて撮る
 立地、規模、使用目的、意匠、公共性、時代…建物の意味・特性を考えて写真を撮る
ということについては、あらためてご説明することではないと思います。
 建築設計家から、建物のコンセプトの説明を受けた上で撮影する場合も、予備知識無
しで撮影するときも、実際の建物を良く観察することからすべてが始まります。
 新築された建物の写真を撮影するときも、著名な建築物の現状を記録する場合も、
通常“建築写真”といえば、建物を“見栄え良く”“立派に”“美しく”撮ることを期
待されています。建築家やゼネコンの作品例として雑誌に掲載されたり、広告として使
われることが多いためです。建築の現状を調査記録したり、建物の価値を評価する目的
で撮影する場合は、設計家の意図とは違ってしまった建物の欠点や、その建物と周囲の
環境との対立した関係までも、正しく撮ることが必要になってきます。
 基本的に写真は「真実を写す」ものとして認知され信頼されているわけですが、何の
ために、どんな視点に立って撮るかによって、写真の持つ意味は変わってくることも事
実です。建物の美点も欠点も正しく記録し、未来の設計に生かされてこそ、写真を撮る
意味があるといえるのではないでしょうか。
 ★建物の意味・特性を考えて、良く観察することからすべてが始まる。
 ★その建物の美点も欠点も、正しく撮ることに意味がある。


■建築写真撮影のための機材の選択


●カメラを選ぶ
 いろいろなカメラの中で、建築写真に適した機種の条件を考えてみます。
・コンパクトカメラ …… 手持ちで気軽に撮影できるので、建物見学のとき等に便利。
 一般にレンズが暗いので、室内撮影に向かないこともあります。デジタルカメラでも
 フィルムカメラでも、ワイドレンズが付いた機種が建築の撮影には適しています。
 ★ワイドレンズ(35oフィルムカメラ換算で28mm等)の付いた機種を選ぼう。
 ★三脚を使うか、高感度設定や高感度フィルムを使って、フラッシュを非発光に設定
  して室内を撮影してみよう。
・一眼レフカメラ ……  レンズの交換が可能。超広角から超望遠レンズまで使える。
 ファインダーの精度が高く、フレーミングが正確にできる。機種限定だがグリッドス
 クリーン・シフトレンズも使用可能。
 ★ワイドレンズ(35oフィルムカメラ換算で16〜20mm等)を使ってみよう。
 ★グリッドスクリーン・シフトレンズが使用可能な機種がベスト
・デジタルカメラ ……  コンパクトカメラも一眼レフカメラも、デジタルカメラの
 基本はフィルムカメラと同じです。フィルムに代わって受光素子(CCD or CMOS)が
 使われています。
 撮影してすぐに画像が確認できる、感度の設定変更が容易、パソコンで修正・合成が
 容易にできる、光源によってホワイトバランスを変えられるなど、デジタルカメラな
 らではの多くのメリットがあります。
 フィルムカメラと同等の画質を要求するなら、
   ハガキサイズのプリントで300万画素、
   A4サイズなら500万画素、
   A3サイズに伸ばすなら800万画素以上が必要です。
 撮影した写真を後で加工したり、色調などを調整したりするためには、写真の画質を
 維持するために、撮影時にRAWデータで記録しておく必要があります。コンパクトカ
 メラでもRAWデータ撮影に対応した機種を選んでおくと良いでしょう。
 ★ワイドレンズの使える機種を選ぼう。画質維持のためにはRAWデータ撮影が必要。
・大型ビューカメラ …… 大・中版フィルムを使用するので仕上がりが高画質レンズの
 交換が自由。超広角から超望遠レンズまで使える。アオリの使用が自由で、様々な
 撮影テクニックが使える。
 ★ワイドレンズの使用可能な機種を選ぼう。専門書で勉強して下さい。


●レンズを選ぶ
 低価格の一眼レフカメラの場合、標準ズームレンズがセットで販売されていますが、
その他に、各メーカーから数十種類の交換レンズが出されています。建築写真に適した
レンズを選ぶとすれば、(35mmフィルムカメラ換算で)16〜20mmクラスの広角レンズが
第一に挙げられます。室内空間を撮影するには、このくらいの広角レンズが必要です。
昨年末より、デジタル一眼レフカメラに適応した新規格の広角レンズが各メーカーから
発売されはじめ、低価格化・高性能化が進んで使いやすくなって来ました。
広角系のシフトレンズは価格も高く、使用できるカメラのメーカー、機種ともに限定さ
れますが、建築写真撮影にはベストのレンズ(プロには必需品)です。しかしながら現
状はデジタルに適応しているとは言えない状況です。
・焦点距離・画角と視点との関係
  焦点距離が短くなれば、画角は大きくなる=焦点距離が短いほうが広角レンズ
  視点が同じとき、レンズの焦点距離が1/2になれば、写る範囲の面積は4倍
・レンズのラインアップ
  広角系 … 14mm 16mm 20mm 24mm 28mm
  標準系 … 35mm 50mm
  望遠系 … 85mm 100mm 135mm 200mm 300mm〜
  特殊系 … シフトレンズ マクロレンズ等
  ★16mm〜24mmの広角レンズを選ぼう。レンズ専門メーカー品も選択枝


●三脚+水準器を使う
 通常、プロのカメラマンが建築写真を撮影する時は、手持ちでないと撮影できない場
合を除いて、必ず三脚と水準器を使用しますが、その理由は一つではありません。
・建物の水平・垂直を正確に出すことができる。
  →特に建築写真に適した表現が可能になる。
・スローシャッター=長時間露光が使用可能になる。
 →夕景、夜景、室内等、低照度の条件での撮影が可能になる。
 →ノイズの少ない低感度設定・微粒子な低感度フィルムが使える。
 →レンズの絞りを絞り込むことで、近くから遠くまでピントが合った写真が撮れる。
・多重露光が可能になる。
 確かに、三脚は重くかさ張るので敬遠されますが、三脚が無ければできない表現
 もあるわけで、できる限り使用することをお勧めします。
 ★三脚+水準器があれば表現の可能性が広がる。
 ★高さ150cm以上が使えるものを選ぼう。ある程度の重さと強度が必要


●フィルムを選ぶ
 フィルムには使用目的別にいろいろなタイプがあります。簡単に整理してみました。
デジタル化のなかで、今後フィルムはしだいに種類と生産量が減少していきそうです。
・ネガカラーフィルム … カラープリント作成を主目的としたフィルム。
   反転画像=陰画。
   通常はオレンジ色のベースフィルム。
   露光量の許容範囲が広い。
   写真プリント作成時には、色・濃度等の調整が容易にできる。
   増感度現像(増感)は行わない。
   ほとんどがデイライトタイプ。

・ポジカラーフィルム … スライド作成・印刷用原稿を主目的とするフィルム。
   陽画。
   リバーサルフィルムとも言う。
   複製を作らずにオリジナルフィルムをそのまま使用できる。
   増感度現像(増感)が可能。
   露光量の許容範囲が狭いため、段階露光が必要な場合がある。
   メーカーやブランドごとに、発色や感色性の個性が強い。
   デイライトタイプとタングステンタイプがある。
・モノクロフィルム …… 黒白プリント作成を主目的としたフィルム。
   反転画像=陰画。
   自家現像が容易にできるため、現像・プリントで個性を出せる。

・デイライトタイプ …… 太陽光線で適正な発色をするよう作られたカラーフィルム
・タングステンタイプ … 白熱電球光線で適正な発色をするよう作られたカラーフィルム
・低感度タイプ  ……… ISO100以下の感度を持つフィルム。粒状性が良い。
・高感度タイプ  ……… ISO800以上の感度を持つフィルム。やや粒状性が荒い。
カラーフィルムは、メーカーやブランドごとに、発色、粒状性、感色性、コントラスト等
に個性があるので、どれが良いとは一概に言えません。いろいろ試しに使ってみて、好み
のものを選ぶのがベストです。建築写真に適したフィルムを選ぶとすれば、次の点に注意
して下さい。

★三脚なしの場合 → 高感度フィルム (ISO 800等)を使用。感度を優先して選択する。
           手ブレに注意して撮影する。
★三脚使用の場合 → 低感度フィルム (ISO 100等)も使用可能。粒状性・発色を優先し
           て選択する。
★屋外撮影の場合 → デイライトタイプを使用。粒状性・発色を優先して選択する。
★室内撮影の場合 → 基本的にデイライトタイプを使用。必要ならフィルターを使う。
           光源が白熱電球だけの場合に限り、タングステンタイプを使う。
           ミックス光・蛍光灯の場合は、そうした条件下で、発色の良い
           フィルムを選ぶ。フィルターと多重露光を併用する場合もある。
デジタルカメラでは、カメラを選ぶ=受光素子(CCD or CMOS)を選ぶことになります。
光源によってホワイトバランスのセッティングを変えることで、フィルムを変えるのと
同じ効果が得られます。タングステン光線でも、蛍光灯でも、正確な色再現ができるは
ずです。ただミックス光の場合はフィルムと同様に、正確な色再現は難しくなります。


●現像所を選ぶ プロラボを使う
 一枚の35mmネガカラーフィルムには、サービスサイズ(L版)のプリント上では再
現できないほどの量の情報が記録されていています。キャビネサイズ、六切・四切サイ
ズといった、大きなプリントにして初めてその情報量が生かされてきます。ブレが無く、
ピントの合ったネガなら、全紙サイズ(約540mm×430mm)の引き伸ばしにも十分です。
比較的コストのかからないサービスサイズの2L版(約175mm×125mm)の引き伸ばし
でも、かなりの情報が再現されてきますので、試してみて下さい。
 また、通常のサービスサイズは、自動プリンターによる“機械焼き”なので、色調の
コントロールやトリミングは機械任せの自動調節ですから、撮影時に予想した仕上がり
とはズレがあることが多くなります。始めに焼いたプリントを色見本として、自動プリ
ンターのオペレーターに仕上がりの指示を出せば、かなり望み通りの仕上がりになって
きます。
 プロラボ(プロフェッショナル・ラボラトリー)現像所を使えば、より完成度の高い
プリントを、専門のプリンターが“手焼き”仕上げしてくれます。価格も品質に見合っ
たものですが、試す価値はあります。特にポジカラーフィルムの現像は、納期が短く、
増感にも対応しているのでお勧めです。
 ★引き伸ばしプリントで、フィルムに記録されている情報を引き出して活用する。
 ★プロラボ現像所を使って、完成度の高い仕上げを試してみる。


●デジタルフォトの加工と出力
 デジタルカメラで撮影する場合、写真データの記録形式にはJPEG、TIFF、RAWなど
の種類があります。JPEGは記録された時点ですでに圧縮されていて、データが小さく軽
いので、少ないメモリーで多くの枚数を撮影・記録することができます。ただし、色
調補正や画像加工をすると、画質が劣化する欠点があります。RAWはデータが大きく重
いのですが、色調補正・画像加工後も画質の劣化が抑えられます。撮影した写真をそのま
ま使うのであればJPEG、あとで調整・加工をするならRAWで撮影するのが良いでしょう。
 色調・明るさ・コントラストの調整、ゴミ・キズ等の修正、合成・加工等が自由に
できるのがデジタルフォトのいちばんの利点です。ただし過度の修正・加工は、写真
の持つ価値を損ねる場合もあります。使用目的と必要性に応じた修正・加工が求めら
れます。
 画像の加工には、コンピューターのパワーも必要です。通常の2〜4倍以上のメモ
リを搭載する必要があります。最近は低価格の機種でも十分なパワーがあるので、
10万円台の機種と低価格のソフトでも、かなりの作業をこなすことができるはずです。
 デジタルフォトのプリント出力には、カラープリンターを使うのが一般的でしょう。
現在販売されている「写真画質」を売り物にした機種なら、かなりの高画質のプリン
トが得られます。3〜4万円台で販売されている機種をプロカメラマンが印刷入稿に
使用している場合もあります。カラープリンターの出力紙は、写真のプリントと比べ
て耐久性が悪く、退色の可能性が問題とされていましたが、最近発売された機種では
この点も解消されてきています。

 プレゼンテーション等で大きなサイズのプリントが必要なら、デジタル出力センタ
ーを活用しましょう。写真のプロラボもほとんどがデジタル対応になっています。
 デジタルフォトの加工・出力については、近年いろいろなテキストが出ていますの
で、参考にしてみてください。


■建築写真撮影のテクニック

 特に建築写真に必要な基本的テクニックについて、簡単にまとめてみました。


●“アオリ”について
 通常のカメラは、レンズとフィルムの位置が固定されています。レンズの軸はフィル
ム面に対して垂直になるよう調整されています。“アオリ”とは、レンズとフィルムの
位置関係をずらして使うテクニックのことです。レンズの軸をフィルム面に対して平行
移動したり(シフト)、傾けたり(ティルト・スイング)して、画像の形やピントをコン
トロールします。“アオリ”可能に設計されたレンズのことをシフトレンズといいます。
 建築写真には特に必要とされるテクニックですが、特別な機材を必要とするため、あ
まり一般的ではありません。建築を専門とする方で、建築の記録などの撮影機会の多い
方には、一眼レフカメラ用のシフトレンズをお勧めします。


●建物の水平・垂直を出す
 すでに述べたように、建物の水平・垂直を正しく出して撮影するには、三脚、水準器、
“アオリ”の使えるカメラやシフトレンズなどが必要になってきますが、基本的な事は、
“対象となる面とフィルム面を平行にする=対象となる面にレンズの軸を垂直にする”
ということだけです。あまり高さのない建物なら、普通のカメラでこれは十分可能です。
ただ、カメラの向きが固定されてしまうので、細かいフレーミングはできませんが、後
でトリミングしてプリントすれば良いことです。高さのある建物でも、カメラを上向き
に構えず、超広角レンズを使って同様に撮影して、画面に入ってしまった不要な下の部
分をトリミングすれば、シフトレンズと同様の写真が出来上がります。
 水平・垂直を正しく出して撮影するのは、建築写真の基本ですが、そればかりではあ
りません。高い所から敷地全体を見下ろしたり、下から見上げて建物の高さを強調した
り、ファサードの部分を切り取って見せたり…画面上は水平・垂直で無くても、カメラ
の操作の上では、常に水平・垂直を意識することが必要です。


●中心を意識して視点を合わせる
 建物にはいくつもの“中心”があります。外観の中心、アプローチの中心、空間の中
心、デザイン上の中心、円の中心…こうした“中心”に視点を合わせることで、建物の
特性をはっきりと意識した写真を撮ることができます。シンメトリーな外観を持つ建物
なら、その中心線の延長上に視点を置かなければ、完全にシンメトリーな写真は撮れま
せん。円形のデザイン(例えばドーム天井)の中心にレンズを向けなければ、丸いもの
も歪んで写ります。特に広角レンズを使うと、歪みが誇張されるので注意が必要です。


●その場の光で撮影する 光の特性に注意する
 基本的に建築写真では、室内空間を撮るときもフラッシュを使わずに、窓からの光と、
室内照明の光、その場にある光だけで撮影します。眼で見たとおりの室内空間の雰囲気
を写すためです。部屋の窓の無い部分や、手前の影になっている部分に、補助光として
弱く照明を当てることもありますが、不自然にならない程度にとどめておくのが良いと
思います。特に壁や床材の色を出したいときには、より複雑なライティングが必要にな
りますが、空間の雰囲気は損なわれてきます。家具や床材の広告写真と、建築の空間を
撮る建築写真とでは、目的に応じてライティングや視点の位置などを変える必要があり
ます。
 窓から弱く太陽光が差し込む、ある室内空間を撮影する場合を想定してみましょう。
南側の窓からは暖かみのある太陽光、北側の窓からは青空の反射光、天井からは蛍光灯
の緑がかった間接照明の光と、白熱電球のダウンライト。そして床の赤いカーペットか
らの反射光…様々な種類の光のミックスされた空間を撮影すれば、白い壁も白く写らな
くて当然です。肉眼では、光の色温度などの特性は、曖昧にとらえられていますので、
フィルム上では、光の色がより強調されてしまうこともあります。
 こうしたミックス光の状況では、光の種類ごとにフィルターを使って多重露光をした
り、比較的に感色性の曖昧なタイプのフィルムを使って撮影すれば、肉眼で見た感じに
近づけることができます。言いかえれば、ミックス光の状況では完全な色の再現は不可
能に近いのです。
 また、外観撮影の場合を考えてみます。太陽光が当たっている部分はストレートに色
が出ますが、影の部分はどんなに露光量を増やしても(露出補正をしても)青空からの
紫外線の影響もあって青みがかったくすんだ発色になります。建物の北面は、薄曇りの
反射光で撮った方が良いくらいですから、青空の下では完全な色の再現は難しいのです。
これも、日陰で鮮やかな発色をするような特性を持ったフィルムを使うことで、多少は
望みの色に近づけることができます。


●露光量の決定
 カメラに内臓された露出計は、物から反射して来る光の量を測定する“反射式露出計”
ですから、対象物の色や光の反射率によって測定値が変化します。画面内に光源がある
ときや、水面などの反射がある場合、逆光のときなどは、カメラの露出計まかせではア
ンダー気味の露光量になりがちです。
 室内空間の撮影では、逆光状態が多くアンダーになりやすいので露出補正が必要です。
基本的には、画面内のどの部分を基準にするかを考えて露出を決定します。

 ★デジタルカメラ →露光量を正しく厳密に決める=段階露光で合成も考える。
 ★ネガフィルム → 露光量を多めにする=シャドウ部分で露光量を決定する。
 ★ポジフィルム → 露光量を正しく厳密に決める=段階露光(ブラケッティング)する。


●ピントと被写界深度
 レンズのピント(焦点)をある一点に合わせると、その前後に、ピントが合っているよ
うに見える範囲(被写界深度)があります。この範囲は、レンズのしぼりを絞り込む
(数値を大きくする)と広がります。奥行きのある空間を撮影する場合、手前から奥ま
でピントを合わせるためには、中間の部分(手前から1/3位)にピントを合わせレンズのし
ぼりを絞り込みます。
 建築模型の撮影などクローズアップのときや、手前から奥まですべてピントを合わせ
たい場合など、そのレンズの最小絞り(最大数値の絞り)まで絞り込む必要があります。
 この時シャッタースピードが遅くなるので、カメラぶれに注意してください。
 オートフォーカスのカメラは、何もない空間にはピントが合いませんので、ガランと
した室内空間を撮影するときには注意が必要です。


●構図の決定 フレーミング
 構図の決め方や画面構成については、特にここでご説明することはありません。
 写真の技術上で注意するべき点は、最終の使用目的、仕上げの形態を考えた上で、撮
影時に構図を決めておくということです。フィルムの一部をトリミングして使用すれば、
それだけ拡大率が高くなり、粒状性など画質は低下します。できるだけフィルムいっぱ
いに使いたいところです。プリントや印刷時に必要な“断ちしろ”を取っておくことも
必要ですし、縦位置と横位置のフレームの違い等も、撮影時に決めておくべきことです。


建築模型写真の上手な撮り方

■建築模型写真撮影のポイント

 建築模型を撮影するには、基本として商品写真撮影の技術が必要になりますが、ここ
ではできるだけ簡単に、手軽に撮影する方法を取り上げたいと思います。
建築模型は小さな建築物 自分も同じスケールまで小さくなったつもりで見る建築模型
を撮るということは、小さな建築物を撮る
ということです。机の上に建築模型を置いて
斜め上から撮れば、それは航空写真の視点と同じ写真になります。建築模型の建ってい
る土台のレベルから見上げれば、高さ30cmの模型の写真も、30mのビルを見上げたよ
うに見えてきます。小さな自分がカメラを持って、模型の廻りを歩いているつもりで撮影
アングルを見つけてください。模型を撮るときは良いアングルを見つける
ことが必要なのですが、計画されている建物の欠点を探すつもりで撮ることも重要です。
建てる前に計画を見直すことこそ、模型を作る目的でもあるわけですから。


★全景写真だけではすべてを表現できない いろいろな視点から特徴を引き出そう実際
の建物を撮影するように、全景写真一枚だけでなく、見上げや俯瞰、遠景、部分のクロ
ーズアップなど、いろいろな視点から見て、建物の特徴を引き出しましょう。模型の製
作者・設計家が、これはと思うイメージを撮影できればベストです。


★太陽と同じようにメインの照明は一灯ライティング 合成を前提とした撮影を考える
晴れた日に建物の外観を撮影するのと同様に、メインの照明は一灯だけにして、太陽光
を再現してみましょう。真上に近いところからライトを当てて、真夏の光にしたり、地
平線近くからの西日にしてみたり、天井や白い板にライトを反射させて、曇り空の拡散
した光を再現したり、壁面に赤や青の光を当てて、夕景のようにしたりと、実際の建物
を撮るときにはできないことも、模型なら試すことができます。デジタル撮影が主流に
なって画像の合成・加工が容易になり、撮影の方法も変わってきました。合成を前提と
して、加工のための素材を撮影すると考えるのが良いでしょう。


★建築模型写真には専門家が少ない いろいろ試して新しい表現を探ろう建築模型写真
をいちばん数多く頻繁に撮影しているのは、たぶん、建築学科の学生か、設計事務所の
スタッフではないでしょうか。プロのカメラマンが撮影する場合を考えても、スタジオ
で商品写真を撮影している専門家か、建築写真の専門家が、仕事の一部として撮ってい
ることが多いと思います。いろいろ試してみて新しい表現を見つければ、それが新しい
基準になるかもしれません。


■建築模型写真撮影の機材の準備とテクニック

 建築模型を撮るには、基本的に商品写真撮影の技術を使います。商品写真撮影につい
て、ここで詳しく説明することはできませんので、必要なら専門書を見ていただく事に
して、撮影機材と簡単なテクニックについて、思いつくまま列挙してみようと思います。


●撮影場所
 とくに写真スタジオで撮る必要はありません。六〜八畳くらいの、ブラインド等で外
光が入らないようにできるスペースが必要です。白い壁があれば、そのまま背景として
利用できます。太陽光と同じようなライティングが基本ですから、屋外で撮影するのも
一つの方法です。


●照明器具
 写真用のフラッドランプ(300W〜500W タングステンランプまたはブルーランプ)が
二灯あればベスト。スタンドも必要ですが他のもので代用できます。白熱電球のブーム
スタンドも使えると思います。
・レフ板(反射板)として、白い板やケント紙のようなものが必要です。
・ライトの光が、必要のない所に届かないようにカットする“ハレ切り”が必要になり
 ます。
・羽根状の板が付いた照明器具も有りますが、黒紙などで代用できます。


●撮影機材
 コンパクトカメラより一眼レフカメラの方が、ファインダーが正確で撮りやすいので
お勧めです。レンズは28mm〜80mm位の標準ズームだけで十分です。近づいて撮れる接写
機能がある方が、いろいろな視点から撮影できます。
 デジタルカメラは接写機能が充実している機種が多く、建築模型の撮影には便利な点
が多いようです。デジタルコンパクトカメラなら液晶画面で確認しながら撮影できるの
で、模型の内部の撮影等にも便利でしょう。
 三脚はぜひ用意してください。手前から奥までピントの合った写真を撮るためには、
絞りを絞り込む必要があるので、その分スローシャッターを使うことになります。夜景
風に撮影する場合、30秒〜数分の間シャッターを開けっ放しにすることもあるのです。
 小さな水準器があると、水平・垂直が正確に出せます。1500円位で購入できるのでお
勧めします。
 シフトレンズの35mmクラスがあると、建築模型撮影には便利なのですが、少し値が張
ります。まずは手持ちの機材でいろいろ工夫してみてください。


●撮影台
 模型を置く台は、上から俯瞰するときは低く、グラウンドレベルから撮るときは、カ
メラ位置と同じ高さにする必要があります。また、全体を俯瞰して背景に紙や布などを
敷き込むときは、台は模型より大きく、模型に近づいて撮るときは、模型よりはみ出さ
ないくらいの小さな台の方が撮影しやすくなります。
 台は水平が基本ですが、カメラ位置との関係で、傾けた方が良いこともあります。


●背景
 白い無地の壁ならそのままで背景になりますし、シーツやカーテン生地などでも代用
ができます。写真撮影用として、ロール状の背景紙(バックペーパー)が販売されてい
ます。幅1〜3mくらいで、白、黒、グレー、ブルー等、数十種類ありますが、淡いグ
レーだけでも持っていると便利です。
 背景を完全に黒くしたいときは、黒のベルベットなどの布を使えば良いのですが、た
とえ白い壁でも、模型との距離を取って明暗比を大きくすれば(絞り値で5段くらい)
写真では黒く写ります。ここに弱くライトを当ててグラデーションを作ったり、ライト
に色の着いたフィルター(照明用のゼラチンフィルター等)を被せて、夕焼けのように
見せることも可能です。ある程度距離を取れば背景にはピントがきませんので、少しぼ
やけてきれいなグラデーションが出せます。
 デジタル撮影で合成を前提にしている場合は、背景は合成しやすい色(ブルー等)を
使います。重要なのは合成する素材写真の方で、撮影時の背景は合成に適していれば良
いのです。


●デジタルカメラのホワイトバランスの設定
 デジタルカメラの場合、ホワイトバランスの設定を変える必要があります。蛍光灯や
タングステン灯などの光源に合わせた設定をすれば、正しい発色が得られます。ミック
ス光では(フィルムと同じく)正しい発色は難しくなります。
 RAWデータで撮影する場合は、「RAW現像」時にホワイトバランスを変更できるので、
撮影時には細かい設定は必要無くなります。


●フィルム選び
 さて、写真用のフラッドランプ(タングステンランプ)でライティングしている場合
を考えてみます。
 ポジカラーフィルム(リバーサルフィルムともいう)を使うなら、タングステンタイ
プを選びます。この場合デイライトタイプを使うと、色温度の影響で全体が赤味の強い
色になってしまいます。
 ネガカラーフィルムを使うなら、プリント時に補正できるので、デイライトタイプで
そのまま撮影しても、まず問題ありません。正確な色再現を望むなら、色温度変換フィ
ルター(この場合薄いブルーのフィルター)を使います。
 照明のフラッドランプをデイライトランプ(ブルーのランプ)にする方法もあります。
光量が少なく、発色があまり良くない点が気になりますが、普通のデイライトタイプの
フィルムで簡単に撮影できます。窓からの外光が入る状況でも色温度の違いを気にする
必要がありません。
 フィルム選びは、色の好みもあるので、いろいろ試してみるのが一番です。建築写真
には、自然な発色をするタイプが適しているように思われます。よく使われているもの
をいくつかあげてみます。
 ★ネガカラーフィルム
   フジカラー リアラエース100    …… 蛍光灯の光でも自然に近い発色をする
   フジカラー スペリア400      …… 高感度でも比較的微粒子
   フジカラー プロ160 NC(ブローニー)…… 蛍光灯の光でも自然に近い発色をする
 ★ポジカラーフィルム(リバーサルフィルム)
   コダック エクタクローム100プロ(EPN) … 蛍光灯の光があまり緑カブリしない
   コダック エクタクロームプロ E100S … 自然な発色の万能タイプ
   フジフィルム フジクローム プロビア100F … 鮮やかな発色の万能タイプ
   フジフィルム フジクローム64Tプロ( RTPU)… 自然な発色のタングステンタイプ


●露光量の決定
 デジタルカメラで撮る場合は、厳密な露出が必要です。段階露光をするのが基本です。
その場で液晶画面を確認しながら撮影できるので、ミスも防げるはずです。
 ネガカラーフィルムで撮る場合、最近のフルオートカメラなら、一応カメラまかせの
露出で大丈夫ですが、白い背景で白い模型を撮るときなどは、露出補正が必要です。
 ポジカラーフィルムで撮る場合は、厳密な露出が必要です。+1/2、±0、−1/2
と三段階の段階露光をするのが基本です。
 入射光式の単体露出計を使えば、簡単正確に露光量を決めることができます。


●撮影
 さて、いよいよ撮影になります。模型を撮るときは、実際の建物を撮るのとくらべて、
ずっと被写体に近づいているので、被写界深度が浅く、ピントを合わせるために、絞り
をいっぱいに絞り込んで撮影する必要があります。当然、スローシャッター・長時間露
光になるので、ブレに注意して撮影してください。レリーズを使うか、セルフタイマー
を使うと良いでしょう。


●まとめ
 はじめにも触れましたが、建築模型写真には、商品写真撮影の技術を使いますが、ラ
イティングの方法やレンズの選択、視点の位置など、いろいろ違いがあります。
 建築模型を見る視点は、ほぼ建築写真と同じです。小さな建築物を撮るというアプロ
ーチが、建築模型写真のいちばん重要なポイントでしょう。
 撮影技術に不十分な点があっても、設計者の伝えたいことが写っていれば、それが良
い建築模型写真といえるのではないでしょうか。



おしまいに


 建築写真の撮影を専門としている写真家には、もともと建築を学び設計を専門として
いた人もいますし、写真を学び、撮影の対象として建築を選んできた人もいます。どち
らにしても、一番重要なのは撮影の技術ではなく、どのように建築を見て、それをどの
ように写真にして見せるか
ということでしょうか。
 建築を専門とする方が、建物を撮影するときに必要な、“建築写真撮影のテクニック”
についてお伝えするのが、このセミナーの主旨なのですが、短時間でもあり、説明不足
なことも多いと思います。
 もしご質問等ございましたら、下記までメールやFAX等でお問い合わせ下さい。可
能な範囲でお答えしたいと思います。


                                        2005/10/15

有限会社 スタジオバウハウス       辻岡 利之
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TEL 03−3341−4555
FAX 03−3351−0959
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